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8月, 2022の投稿を表示しています

20系客車にはなぜ電源車が導入されたのか

日本で客車列車が衰退した理由はいくつも挙げられるが、そのうちの一つは、機関車に客車向けのサービス電源を提供する機能が無かったことである。世界的に見て、旅客用機関車が客車にサービス電源を供給するのが常識であり(その代わり機関車を付け替える際にエアコンが止まる)、客車を牽引する機関車にサービス電源提供機能が無い日本の機関車は異質である。 20系客車は全車冷房車という点で画期的な存在だったが、当時の機関車に冷房をまかなえるほどの大容量の電源を供給できる機能が無かった。本来ならば20系客車に合わせてサービス電源を搭載した専用機関車が開発されてもよかったのだが、非電化区間では蒸気機関車が牽引しており、蒸気機関車は大容量の発電機を搭載していない。ディーゼル機関車なら発電用エンジンを搭載すればサービス電源を供給できる。特に電気式ディーゼル機関車なら走行用に発電した電力の一部をサービス電源に振り向ければよいので、さほど機器を追加せずにサービス電源を供給できる。実際、アムトラック等の北米のディーゼル機関車はこの方式である。しかし当時のDF50は電気式ゆえに重量が大きい割に走行用エンジンですら出力が過小で幹線での客車牽引に耐えなかったし、その後本線用機関車としての地位を確立したDD51は液体式なのでサービス電源のためには別途専用の発電機を搭載する必要があった。電気式ディーゼル機関車が本線用に実用化したのはJRになってからのDF200からだが、その時点では客車列車がほとんど消滅していたので、JR九州がななつ星用のDF200を発注した際にも機関車にはサービス電源を持たせず、客車側にディーゼル発電機を搭載する従来の方式を踏襲している。もっとも、機関車にサービス電源を搭載するとただでさえ大きい軸重がさらに大きくなってしまうので、軸重に余裕のある客車側にディーゼル発電機を搭載せざるを得ないという事情もあろう。 客車側にディーゼル発電機を搭載するというのは固定編成を前提とした考え方であり、分割併合を前提にした12系や14系でも固定編成であることに変わりない。しかしそれでは1両単位で増解結する一般型客車には冷房を搭載できない。実際、50系客車は非冷房で落成した。しかしその後しばらくして普通列車の冷房化が進展したので、冷房を搭載できない一般型客車は時代遅れの存在となった。 14系客車の火災事故をきっか

EF61はなぜブルートレイン牽引機になれなかったのか

戦後の旅客用直流電気機関車の歴史をたどると、まずEF58がいて、EF61が18両だけ製造された後はブルートレイン用にEF60の500番台やEF65の500番台P型といった貨物用機関車ベースの機関車が続く。牽引力と定格速度とを両立できたのはEF66になってからだが、これは言わずと知れた高速貨物用機関車である。どうして旅客用機関車が打ち止めになってしまったのだろう。 EF58は定格出力1900kW、定格引張力は10,250kgで、弱界磁定格速度87km/hと、旅客用で高速向けの設計ながら牽引力が不足し、特に編成長の長い東海道線では単機では牽引力が不足していた。 EF58の後継として製造されたのがEF61で、こちらは貨物用のEF60がベースながら、歯車比を下げて弱界磁定格速度を76km/hまで引き上げたのに加え、一般客車の暖房用に蒸気発生装置(SG)を搭載していた。定格引張力もEF58の1.8倍の18,000kgあったので、EF58の重連をEF61単機で置き換えることができた。当初はEF58の代走でブルートレインを牽引することもあったようだが、ブルートレイン牽引用にEF60の500番台が導入されてからはブルートレインを牽引せずに、以降徐々に旅客列車牽引運用を減らしていったようである。 よくわからないのは、なぜすでにEF61がありながら、全界磁定格速度39km/hのEF60後期型ベースの500番台がブルートレイン用に導入されたかである。案の定、高速運転に不向きで、数年でEF65に置き換えられている。EF65が不足したときの代走はEF60の500番台でもなければEF61でもなく、EF58であった。そのEF65とて、山岳路線用のEF64から抑速ブレーキ等の山岳路専用装備を省略した貨物用機関車であり、全界磁定格速度が向上したとはいえ、やはり100km/hでの連続運転では負荷が高い。それは1000番台PF型とて同様である。 もしEF60の後期型をベースに歯車比を下げて高速性能重視にしたEF61後期型(500番台?)を製造していたらもっと長く使えていたのではないだろうか。EF61はEF60の前期型がベースだったのとEF58後継で急行列車と普通列車の牽引が想定されていたことから最高速度95km/hだったが、モーターの出力が向上した分を高速性能に振り向けていたら110km/h運転もできた