上越新幹線が十日町経由でなく浦佐経由だったのは土木技術的にそちらの方が有利だったからということで決着がついており、田中角栄による裁定も、土木技術的に合理的な解を選ぶという号令だったのではないかと推測する。上越線が建設された頃はわざわざ山を越えるまでもなく魚野川沿いに線路を通すのが合理的だったし、関越道が建設された際にも沿線人口の多い六日町小出経由のルートが選ばれた。過ぎたことではあるが、ではもし上越新幹線が十日町経由だったらどんなルートになっただろうか。
まず越後湯沢から十日町にかけてだが、山越えとはいってもそんなに長いトンネルは必要ない。北越急行の六日町から十日町にかけての区間の大半は赤倉トンネルという長大トンネルだが、これは六日町から十日町までまっすぐ結ぶと山と直交する形になり、勾配を一定以内に収めようとしたら必然的に長大トンネルになってしまうためである。それに対して越後湯沢から十日町までまっすぐ結ぶルートは山と斜めに交わる。そのため短いトンネルで標高を稼ぎ、トンネルの切れ目をスノーシェッドでつなぎ、ちょうど山の切れ目である大沢峠の下に少し長いトンネルを掘るだけで済む。大沢峠の下には現在新潟県道76号の大沢トンネルが通っており、このルートが越後湯沢と十日町とを最短で結ぶ道路ルートである。大沢峠から十日町にかけては新潟県道82号に並行するルートになり、ここだけはやや勾配が大きくなる。十日町駅付近が標高150m、大沢峠の下がだいたい標高400mくらいなので、このままでは十日町付近で30‰勾配になってしまう。勾配を緩和するためにはトンネルを長くする必要がある。越後湯沢駅付近は標高350mなので、越後湯沢駅から緩い勾配で下れば十日町まで約20kmで標高差200mなので平均勾配10‰である。十日町経由のルートが採用されなかったのは、この区間の勾配とトンネルの長さが不利に作用したためではないだろうか。
十日町の市街地は飯山線の線路に並行するか飯山線の線路の真上に高架橋を建設するなりすれば用地買収を最小限にできる。十日町から先も飯山線にほぼ沿って北上し、飯山線が北東に向きを変えてもなおまっすぐ北上して信濃川の幅の狭い所を橋で越えて、丘陵地をトンネルでショートカットすると小千谷市街に出る。市街地を避けるとなると関越道小千谷インター付近に新幹線単独駅を設置することになるだろう。上越線の小千谷駅は開業当初は東小千谷駅という名前だったことからもわかるように、小千谷の市街地から信濃川を挟んで対岸にある。それに対して新幹線の駅は小千谷の市街地の側にあるので小千谷からのアクセスにはこちらの方が便利である。
小千谷市内には国鉄魚沼線西小千谷駅があった。もともとはこちらが小千谷駅だったのだが、上越線の東小千谷駅が開業して鉄道の乗客が上越線に転移した結果、魚沼線が衰退して廃止されてしまった。魚沼線は小千谷から片貝を経由して来迎寺駅に出るルートだが、元が軽便鉄道だったため線形が良くなくて、新幹線のルートは魚沼線と別に引く必要がある。概ね関越道に並行する形で片貝の市街地を避ける形で北上し、信濃川を渡って信越線前川駅付近から信越線に並行するか、あるいは信越線の線路の上に高架橋を建設すれば長岡駅に至る。
十日町から長岡にかけては信濃川の谷沿いのルートなので標高差が少なく、トンネルも少なくて済む。小千谷市街地の南側の丘陵地をショートカットする場所でトンネルが必要になる程度で済みそうである。
参考までに2022年10月1日現在の沿線人口は以下の通りである。
小千谷市:33205人
十日町市:47874人
魚沼市:33095人
南魚沼市:53572人
沿線人口で見る限りでは浦佐経由でも十日町経由でもほぼ互角に見える。ただし、南魚沼市の人口は石打から六日町、浦佐までの沿線全体の人口であるのに対して、十日町の人口の大半は十日町市街地周辺に集中しており、町としては十日町の方が大きい。魚沼市の人口は小出の市街地に集中しているの対し、小千谷市の人口は小千谷と片貝とに分かれている。といっても片貝はさほど大きな町ではないので高速道路のインターチェンジは無い。