コーヒーを飲んでいる最中に笑って吹き出してしまいコーヒーを吹いてしまうという漫画的な描写がある。コーヒーを吹くという描写はよく見かけるが、お茶を吹くとか牛乳を吹くといった描写をなかなか見かけないことから、吹くための条件がいくつかある中で、たまたまコーヒーがその条件を充足しているのではないだろうかと思うに至った。 まず思いつくのは、冷たい飲み物を吹くことはあまりないことから、飲み物の温度がかなり高くなければならないということである。なぜ飲み物の温度が高くなければならないかというと、笑うときに息を噴き出すときの口と飲み物との間の距離が短すぎてはいけないし、かといって長すぎてもいけなくて、冷たい飲み物を飲むときには口から離さずにぐびぐび飲んでしまうからではないだろうか。一方、熱い飲みものを飲むときには、熱いものがいきなり口の中に入らないように少々距離をとって冷ましながら吸うことになる。飲み物の温度と口との間の距離には何らかの傾向が見られるだろう。 次は飲み物の流動性で、あまりに流動性が低いと息を吹いても吹き飛ばない。その点、コーヒーは流動性が高いので吹き飛びやすい。 あと思い当たるのはコーヒーカップには取手がついているが、湯呑みには取手がついていないことである。取手はカップの重心から離れているので、取手を持つと迅速にカップを移動させることが難しい。一方、湯呑みを両手で持っている場合にはいざとなったらすぐに動かすことができる。笑うときに咄嗟に湯呑みを移動させれば、お茶を吹かずに済むが、コーヒーカップを咄嗟に移動させるのは難しいので笑って息を吹いてしまうと目の前にコーヒーが残っていて、それを吹くことになってしまう。