スキップしてメイン コンテンツに移動

東京スカイツリーに行ってみた

東京の人間は普段は東京の観光名所には行かない。存在は認識しているがいざ実際に行くことは滅多に無いという点において、いわば都市秘境である。

そんな都市秘境の中で最も有名なのが東京スカイツリーである。遠くからでもとてもよく目立つ建物なのだが、なにぶん展望台まで行くための料金がべらぼうに高いので、霊峰白山の如く遠くから仰ぎ見る存在であり、恐れ多くも登頂しようなどという考えは抱かぬものである。ところが、ふとしたことから東京スカイツリーに行くことになってしまった。せっかく行くのだったら楽しまなければ勿体ない。

東京スカイツリーまでのアクセスだが、羽田や東京駅や東京ディズニーリゾートからは直行のバスが出ているが、それ以外の場所から行くためには半蔵門線か都営浅草線で押上駅に出るのが便利である。押上駅を降りるといきなり立派なビルに出る。これがスカイツリータウンで、スカイツリーがどのようなものか知らなかったら、仁和寺にある法師が石清水八幡宮を参拝することなく麓だけ見て折り返したのと同様に、これだけ見ても満足できそうである。土産物店が密集しており、東京土産を買いたかったらここが一番充実しているのではないだろうか。

展望台に行くためには、4階中央まで出る必要がある。しかし、4階中央まで行くためには店の中を通る必要があり、物販に誘導するという点ではよくできている。チケット売り場に到達するためには随分迂回させられる。混雑するときには待ち行列を収容するためのスペースになっており、空いている時期には無駄なように見えても混雑時のことを考えるとよくできている。

チケットを買ったらエレベーターに向かうが、その前に荷物検査がある。空港のセキュリティチェックみたいなのがあったら面倒だと思ったが、鞄を開けて見せる程度である。おそらく弁当の持ち込みを防ぐためだろう。そもそも上に上がったところで弁当を広げるスペースなどないのだが。

エレベーターは大型のが4台あってみるみるうちに人が吸い込まれていく。エレベーター自体は恐ろしく高速なのだが、人の乗り降りに少々時間がかかるのと、乗り場と降り場のフロアが別なのでその移動に少々時間がかかる。しかし乗ってしまえば350mの展望台まですぐである。

エレベーターを降りると、人がいっぱいいる。ものすごい勢いで人が送り込まれてくるから当然といえば当然なのだが、展望台の混雑度を勘案しながら上りエレベーターの乗車人数をコントロールするのはなかなか大変だと思う。人目につかない所で何らかの仕組みがあるのではないだろうか。

さらに上の展望台に行くためには、また1000円出してチケットを買う必要がある。事前予約は受け付けていないが、こちらは比較的空いているようである。たしかにスカイツリーの展望台のチケットつきのパッケージツアーや団体旅行はあまたあれど、おそらく料金に含まれているのは350mの展望台までで、450mの展望台は自己負担なのかもしれない。一回り小さいエレベーターが2台あり、乗ってしまえば30秒で到着する。途中、エレベーターの扉越しに各テレビ局の機器が置いてあるのが見えて、スカイツリーが電波塔であることが見て取れる。

445m地点に到着すると、1000円の追加料金のおかげでこちらはさほど混雑していない。見える景色は350mの展望台と大差ない。ある程度以上高くなってしまうと高さの違いを感じることができないし、そもそも350mの展望台ですら東京タワーよりも高い所にあり、東京周辺のいかなる建物よりも高い所にあるのだから、展望を遮るものなど何もない。しかし空いているのでじっくりと景色を眺めることができる。エレベーターを下りた所から螺旋状にスロープを上がっていく。最初は上野辺りが見えて、徐々に南側に移っていって、東京湾が見えてくる。広大な東京ディズニーリゾートもちっぽけに見える。千葉方面が見えたあたりで向きを転じる。たしかに景色を眺めるとしたら都心方面や東京湾方面を眺めたいというニーズはあるだろうが、埼玉方面を眺めたい人はあまりいないだろうから、そういう意味では合理的にできている。

あまりに高い所にあるせいか景色にリアリティが感じられず、真下を眺めても高さの感覚が無いせいか、全然怖くない。都心方向に目を向けると東京タワーですら小さく感じられる。東京タワーも今や林立する超高層ビルの中に埋もれており、たしかに新しい電波塔が必要になるのも無理もないことである。見える景色はまるでGoogle Mapの航空写真のようなもので、飛行機の窓から眺める景色ともよく似ている。昔は飛行機に乗る機会が乏しかったしGoogle Mapなんて存在しなかったから、こういう展望台からの景色は貴重だっただろうが、今では地図の方が追い越してしまったので、地図を再確認しているような気分になる。眺める景色も要は東京の建築物群であり、とりたて造形的に美しいわけでもない。むしろスカイツリー自体の方が造形的に美しいが、スカイツリーに登ってしまうとせっかく美しいスカイツリーが見えなくなってしまう。強いて言えば東京の都市圏の巨大さを実感することはできるので、こういうスケールの大きい景色にもそれなりの意味があるのだろう。

一通り景色に満足してエレベーターを降りると345mの展望台に戻る。エレベーターの目の前に土産物店があり、「ここでしか売っていないもの」という触れ込みが購買意欲をかきたてる。上の展望台と比べるとやはり人が多い。最後に「ガラス床」というのがあり、強化ガラス製の床から真下を眺めることができる。見下ろす景色は他と同じなのだが、自分がガラスの床に立っているという事実が恐怖を引き起こす。床の下にはもう1枚のガラス床があり、両方が同時に破れない限り転落することはないし、そもそも強度計算されて設計された強化ガラスが簡単に割れるはずもないのだが、お化け屋敷のようなもので、人間の想像力をかきたてる。普通に眺めるだけでは高さの感覚が無いので、少しくらいはこういう演出があってもよいと思う。

下りのエレベーターに乗る前に少し並ぶ。下りのエレベーターで効率的に捌かないと展望台に人が滞留してしまうので、上りよりも下りの方がむしろ誘導に気を遣うのではないだろうか。エレベーターに乗ってしまうと一瞬のうちに5階に到着し、元の景色に戻る。さっきまでの非日常の景色が嘘だったかのような日常の光景である。あとは土産物店で一通りお土産を買えば、東京見物の最重要スポットの見物は完了する。

帰りは地下鉄で帰ることもできるが、東京駅や羽田空港までのバスがあるので、お土産を買って荷物が多いときにはバスの方が楽である。成田へ行くならバスで上野に出てスカイライナーに乗るのが便利だろう。羽田へは電車で行くこともできるし、羽田行きの電車は10分間隔で出ているので待たずに乗れるが、やはりバスの方が便利である。電車で640円、バスだと900円だが、260円プラスして電車の混雑から解放されるならバスの方が有利だし、所要時間もバスの方が少し短かったりする。東京近郊在住であっても羽田から首都圏各地へのバス路線が多数設定されているので、羽田経由の方が便利だったりする。特に夕方のラッシュ時に大きな荷物を持って電車を乗り継ぐのは大変なので、多少運賃が高くてもバス利用の方がはるかに楽である。

そういうわけで、スカイツリーを訪問し終えたら即座に帰りたくなる。スカイツリーのオーナーは東武鉄道なので、電車で浅草駅まで誘導しようとしているが、お土産を買って荷物が多くなってしまった後ではどこにも立ち寄る気になれない。

スカイツリーは東京駅と羽田空港からのアクセスが便利なので、東京を訪問するときには東京到着直後か東京出発直前に訪問するのが便利だが、スカイツリータウンでお土産を購入して荷物が増えることを考慮すると、東京出発直前に訪問する方が便利だと思う。唯一心配なのは、当日券購入までの待ち時間が長くなると帰りの飛行機や新幹線に間に合わなくなる可能性があることだが、それなら事前購入して日時を指定すれば済むことである。訪問の際には時間に余裕を持たせて、もし時間が余ったらスカイツリータウンで時間を潰すくらいのつもりでいると調度良いだろう。東京駅や羽田空港で時間を潰すこともできないことはないが、どちらも混雑する場所だし時間を潰す場所もあまり無いので、もし時間を潰すならスカイツリータウンで時間調整した方がよい。

このブログの人気の投稿

中野駅配線改良案

【現状での課題】 発着番線がバラバラでわかりにくい。 緩行線新宿方面行きは2番線または5番線発。三鷹方面へは1番線発、3番線発、または6番線発。東西線は4番線または5番線発。次の列車の発着番線を階段下の電光掲示板でいちいち確認しなければならない。 対面乗り換えができない。 緩行線と快速との対面乗り換えができないばかりでなく、緩行線と東西線との対面乗り換えもできない。緩行線中野止まりの列車から三鷹方面への乗り換えは2番線から3番線への移動が必要。東西線中野止まりの列車から三鷹方面への乗り換えは4番線から1番線への移動が必要。緩行線上りから東西線への乗り換えは5番線から4番線への移動が必要。緩行線上り東西線直通列車から緩行線上り新宿方面への乗り換えは5番線から2番線への移動が必要。すべて階段の昇り降りが伴う。 中野駅での乗り換えの不便さから派生する杉並三駅問題。 高円寺、阿佐ヶ谷、西荻窪から新宿方面に行く場合、中野駅で快速に乗り換えるのも、東西線直通列車から緩行線に乗り換えるのも不便であり、新宿志向の強いこれらの駅で快速が通過すると極めて不便になる。そのため、快速列車がこれらの駅に停車せざるをえなくなり、快速の所要時間が増大し、遠方からの旅客の負担になっているのに加え、特別快速や特急のダイヤも制約される。 【背景】 緩行線の車庫の存在。 大正時代に両国から中野までの線路が建設されて以来、中野が総武線からの乗り入れ列車の終点であり、車庫も中野にあった。現在は検修機能は三鷹に集約されているものの、留置線は引き続き使用されている。なお、三鷹の車庫はもともとは快速線用として建設されたもので、豊田に快速線の車庫ができた際に緩行線の車庫になった。 総武線側と中央線側の旅客数の違い。 比較的混雑する総武線側は列車本数が多く、しかも都心側で折り返し可能な駅が中野と三鷹しかない。一方、中央線側は乗客数が少ないため、輸送力を調整する必要がある。現状では中野を境に輸送力に大きな差をつけているが、緩行線の利便性を向上して乗客数を増やせば中野での折り返しが必要なくなる。 東西線と緩行線の両方に中野駅折り返し列車が存在する。 そのため、緩行線の2面3線のホームが東西線の島式ホームを挟み込む形になっている。2番線は主に中野での折り返し列車向けに使われているが、車庫への入出庫用

iTunesの「空き領域へ曲を自動的にコピー」機能

音楽再生環境をiPhoneに移した。電話を着信した際に、即座に通話できるようにするためである。しかしこのiPhoneはメモリ容量が16GBしかない。64GBあれば手持ちの音楽ライブラリのほぼすべてを入れることができるのだが、そもそも電話として導入されているものなので贅沢は言えない。Android端末だとmicroSDカードを挿して容量を増やすことができて、今なら128GBのmicroSDXCカードが4000円くらいで買えるのだが、iPhoneやiPodだと内蔵されている容量しか使えない。 どのみち64GB分に音楽ライブラリがあったって全部聴くにはまるまる21日かかるのだから、一度に全部を持ち歩く必要もない。それに、普段シャッフル再生ばかりなので、その日に聴く分だけランダムにコピーされていれば十分である。幸い、iTunes上で同期する際には「空き領域へ曲ど自動的にコピーする」というオプションがあり、これを有効にしておくと、その名の通りiTunes側で適当に曲を見繕って入れてくれる。これはもともとiPod shuffle向けの機能だったのだが、iPod shuffleに限らず音楽ライブラリのサイズに比べて音楽プレイヤーのメモリ容量が不足する場合には便利な機能である。 それだけだと「そういう機能がありますよ」という紹介でしかないのだが、しかし、少し調べてみた限りでは、iTunesがどうやって曲を選んでいるのかよくわからない。どうせシャッフル再生するので、同期するたびにランダムに選んでくれれば十分なのだが、コピーされた曲を見てみると、ある程度アルバム単位でまとめてコピーしているように見える。また、同期するたびに再生済の曲を削除して別の曲を代わりに入れてくれるとありがたいのだが、そうなっているようにも見えない。だとすると時折曲を入れ替える必要があるかもしれない。 できれば、特定のジャンルの中から、あるいはチェックマークをつけたアーティストやアルバムの中から容量に合わせてコピーするとかできればよいのだが、今のところそういう機能は無いようである。

東横INNレンタカーサービスを利用してみた

東横イン では、 タイムズカーレンタル (旧マツダレンタカー)と提携して、 宿泊客向けに安価にレンタカーを提供するサービス を実施している。コンパクトカー(デミオ)が24時間5460円(税込、免責補償込)で利用できるだけでなく、東横インの駐車場を無料で利用できたり(大半の東横インの駐車場は有料である)、ホテルまで配車してもらえたりする。ちなみに ルートイン と オリックスレンタカー が提携して 同様のサービス を提供しているが、駐車場無料や配車サービスは含まれていない。また、東横INNレンタカーサービスに比べて少しだけ高い。 東横INNレンタカーサービスを利用するには、まず東横インに宿泊予約をした上で、東横INNレンタカーサービス専用の電話番号に電話してレンタカーの予約をする。その際、東横インの予約番号を尋ねられるが、楽天トラベル等の他のサイトを経由して予約するのでも問題ない。予約情報は予約センターから宿泊先の東横インにFAX(電子メールではないらしい)で送信され、駐車場が必要な場合には駐車場の予約もなされるようだが、念のため駐車場の予約状況については東横インに直接確認してほしいと言われる。予約が完了すると7桁の予約番号をもらうので、変更やキャンセルの場合にはこの予約番号を告げる。 24時間をどう配分するかについては選択の余地がある。早朝に出発するなら前日夕方から借りると便利である。反対に、夕方の帰着がレンタカーの営業時間後である場合や帰着が遅れる可能性がある場合には、翌朝まで借りておけば安全だろう。1泊して空港から往復するなら、正午から翌日正午までといったような借り方が便利だろう。空港からの往復で利用するなら、大人2人なら空港リムジンバスで市内に往復するのと同じくらいの値段だし、デミオだと狭いが無理して3人とか4人で乗ればバスよりも安い。 デミオは後部座席と荷物室が狭いので、大人4人で乗るのは難しいが、どのみち安いので2台借りて2人づつ分乗するか、あるいはもっと大きなサイズの車を借りるかした方がよいだろう。デミオクラス以外の車を借りるときには基本料金から15%割引である。ただしこの程度だったら他社とあまり変わりなかったりする。 東横インにチェックインしたときに東横INNレンタカーサービスを利用している旨は伝わっていた。駐車場の予約情報が伝わっている