日本では電力会社が発電と送電の両方を担っており、電力需要に合わせてきめ細かく供給を調節している。送電線に通信回線を併設して、電圧の情報を収集し、集中的に制御している。各地に風力発電や太陽光発電の施設ができると、電力会社がそれを買い取らされて、その残りの電力需要を石油火力発電で調整している。 最近はスマートグリッドと称して「情報技術を活用して分権的に需給を調整する」みたいな話が出るが、本当にそんなことができるのか疑わしい。分権的に発電するためには、需要と供給とを調整する仕組みが必要である。需要と供給の調整手段として真っ先に思い浮かぶのは価格メカニズムだが、価格メカニズムというのは市場全体の姿の概略を記述した程度のものでしかなく、電力のように需要と供給のマッチングを厳密に行うような状況で、品質を厳格にコントロールできるような代物ではない。 もし電力に品質を求めるなら、誰かが責任を負わなければならない。しかし連帯責任は無責任なので、電力が不足するなら発電しようかなと思う程度で、できなければ無理はしない。電力はサービスと同様に貯蔵できないので、電力が余れば電圧が上昇するので回路を切断しなければならないし、電力が不足すれば、少なくとも一時的には電圧降下が避けられない。なぜなら、供給の不足が価格という情報に反映されて人間の意思決定に影響するのにはタイムラグが伴うからである。このタイムラグを無くす仕組みがなければ電力の品質を確保することはできない。 単純素朴に考えれば、電力供給に対する責任を負うなら、責任を負わない発電業者よりも高い値段で電力を買い取ってほしいものである。しかしそれは現在の電力会社の姿に他ならない。結局電力会社にとっては、コントロールできない発電所が増えるばかりで、既存の石油火力発電所の稼働率が下がるだけということになる。電力会社が抵抗するのも無理はない。 分権的な市場メカニズムよりも、契約ベースで自動的にコントロールする方が有望だろう。 電力供給が不足するときには、重要度の低い所への供給を自動的に遮断するという方法があり、これはスマートメーターで実現しようとしていることである。需要が逼迫しているときには供給されない代わりに、供給に余裕があるときには格安で手に入る電力というのは、使い方によっては魅力的だろうから、契約形態によっては可能かもしれない。例えば、平日の昼...