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バイオマス燃料の物流

電力は本質的に地産地消の資源なので、発電してから送電するよりも、燃料を火力発電所の近くまで輸送する方が効率的である。さすがに水力発電のために水を輸送するのは難しいが(川の下流では落差を稼げないので、発電機を回せない)、火力発電なら燃料を運んでくればよい。

化石燃料で火力発電を行う場合には、燃料の水揚げの都合上、大都市付近の港湾付近に発電所を立地することになる。一方、国内のバイオマス燃料で発電するなら、そのために最適化された立地ならびに物流のスキームが必要である。

電力需要があるのは結局のところ大都市なので、バイオマス燃料を大都市付近の発電所まで運ぶのが効率的である。問題はコストである。普通にトラックで運んでいては輸送コストがかかりすぎて燃料としての競争力が得られない。

しかし物流には隙間があるので、それを活用すればよい。メール便が安いのは、大口貨物の隙間を利用するからである。隙間輸送なら集配と仕分けの費用しかかからない。

特におがくず等のバイオマス燃料は軽量だし、袋に入れれば自由に形を変えることができるので、隙間に詰めやすい。場合によっては梱包材よろしくクッションとして活用することもできる。タダ同然の値段で調達してタダ同然の値段で運んでくれば競争力が出るだろう。幸いバイオマス燃料の生産は小口なので、そういう小技が効くのである。

隙間といっても、必ずしも小さなスペースとは限らない。沿岸部から内陸部へ一方通行的に輸送されるものがあれば、帰りにバイオマス燃料を輸送することで稼動を効率化できる。沿岸部から内陸部へ一方的に輸送されるものとして典型的なのは石油である。タンク貨物列車が沿岸部の製油所から内陸部のオイルターミナルまで運行されているが、帰りは積荷が空である。他方、バイオマス燃料は内陸部から沿岸部に一方的に輸送されるものなので、そこにバイオマス燃料を積めば、輸送効率が向上する。もっとも、石油タンク貨車に果たしてバイオマス燃料なんて入れることができるのかという問題はあるが、どうせ燃料にするなら少しくらい石油がついたって困らないので、タンクが汚れなければよいのだろう。ホッパー車とタンク車を兼用するような貨車を新たに設計できれば、それに越したことは無い。

さて、ではどうやってタダで運んでもらうかというと、隙間を利用してバイオマス燃料を輸送する業者に対して、見返りに排出権を与えるのである。物流は温暖化ガスの主要な排出源だし、内燃機関を必要とする限り、化石燃料の消費を無くすこともできない(バイオエタノールの生産効率が著しく向上すれば話は別かもしれないが)。物流には規模に応じた温暖化ガスの排出が伴うので、排出権を購入しなければ温暖化ガスの削減は無理である。だから排出権を買ってもらえるのである。あるいは、「当社はバイオマス燃料を無償で輸送することで再生可能エネルギーの活用を促進し、環境に貢献しています」というイメージを目当てに引き受けてくれる物流業者もあるかもしれない。

排出権という紙切れでバイオマス燃料をタダ同然の値段で調達したら、それで発電して電気を売るのである。直接売らずにデータセンターのような電力消費の多い商売をしてもよいが、一緒にやる必然性もあるまい。地方で分散して発電するのも悪くないが、それでは供給過剰になるし、環境対策を講じるには、ある程度のスケールメリットが必要なので、やはり大都市付近に立地するのが有利だろう。

バイオマス燃料は不急不要なので、輸送需要の少ない時期に重点的に運んだり、隙間を利用してこつこつと運ぶのが効率的である。物流拠点のタンクないしサイロに貯蔵しておけばよいだろう。

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