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エスカレーターの混雑緩和は誰のためか

ここ数年来、駅のエスカレーターで「混雑緩和のため左右ともに立って乗ってほしい」という掲示が出るようになった。その根拠としては、エスカレーターを歩く人のために1列空けるよりも2列とも立って乗る方が時間当たりの輸送人員が増えるということが挙げられている。これには以下の3つの問題があると考える。

1)目的関数の妥当性について

そもそも混雑緩和を目的にする際の目的関数が輸送力であってよいのだろうか。輸送力を指標にするのは供給側の都合でしかない。ユーザーにとっては各人の時間の機会損失を最小化することの方が重要で、時間の機会損失は人によって異なる。急がない人にとっては列に並ぶための待ち時間はさほど重要でない一方で、急ぐ人がエスカレーターを歩けなければ、エスカレーター1か所につき1分ほどの機会損失が発生し、それがエスカレーター数本分蓄積すれば数分になる。急ぐ人にとって朝の数分間はとても貴重である。ユーザーの観点に立つならば、時間の機会損失の総量の最小化を目的とすべきである。

2)鉄道会社の施策との整合性

もし混雑緩和のために誰しも同じように詰め込むべきであるという考え方を認めるならば、ラッシュ時に有料の着席サービスを提供することを正当化できない。エスカレーターで詰め込みを進めたいなら、ラッシュ時の有料特急やグリーン車を先に廃止しなければおかしいのではないか。輸送力のひっ迫した路線なら田園都市線のように平行ダイヤにしなければならないから、中央線の通勤特快や京葉線の通勤快速のような速達列車は取りやめなければならない。鉄道会社にそうするつもりがないなら、混雑緩和のために詰め込みをすべきであるというエスカレータ運用の方がおかしい。どうして鉄道のように急ぐ人と安く移動したい人のニーズが両立できるような施策を考えないのだろうか。エスカレーターが複数あるなら、遅いレーンと速いレーンがあってもよいのではないか。ユーザーにとっては駅構内も列車もともに鉄道を利用するという体験の一部なのだから、駅構内と列車とで原理原則が異なることは許されない。鉄道とエスカレーターとでは監督官庁が異なるというのはまさに役所の方を向いた供給側の言い訳であって、ユーザーの側を向いていない。

3)エスカレーター会社の技術力

エスカレーター会社は、「エスカレーターは立って乗るためのものであり、エスカレーターの上を歩くことは想定されていない」と主張する。しかしそれはあくまでも供給側の都合でしかない。なぜ、ユーザーの立場に立って人が歩けるエスカレーターを作ろうとしないのか。必要は発明の母であり、明確なニーズが存在するにも関わらず、なぜそれを実現しようとしないのか。そのような技術を生み出す意思も能力もないエスカレーター会社の都合に社会が合わせなければならないというのはおかしいのではないか。

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