老人はテレビが好きで1日中見ている上、耳が遠いので音量が大きい。音が聞こえにくいのは本当は聞こえた音の意味を理解する能力が衰えているからなのだが、音量が大きければ解決すると勘違いして大音量を出す。大画面テレビの時代になってテレビとの距離を取るようになってからさらに音量が大きくなった。だったらイヤホンでもつけて心置きなく大音量を楽しんでほしいのだが、なかなか実現しない。
テレビ向けのワイヤレスヘッドホンは昔からあり、Bluetoothと異なり伝送遅延が少ないとかペアリングが不要といった利点がある反面、専用の送信機をつける必要があってヘッドホンと送信機の両方に電源を入れる必要があるし、電池の消耗が速くて頻繁に電池を交換するのが煩雑だったりするので、なかなか普及しない。老人は煩雑な操作を嫌うのである。有線のヘッドホンならもっと扱いやすいが、テレビが大画面化するにつれて必要なケーブルの長さが増大し、ケーブルの長さに動きが制約されて犬小屋につながれている犬のようになってしまうので、これもあまり実用的ではない。
現時点で利用可能なソリューションの中で最も便利なのはおそらくスマホ用に普及しているBluetooth接続のスマホ用ワイヤレスイヤホンではないだろうか。耳うどんは落としやすいので屋外で使うには不安だが、室内で使う分には問題ないだろう。人が密集していなければ音漏れを気にする必要もない。
一昔前のハイエンドのテレビからBluetoothが内蔵されているが、これはスマホやPCの音声をテレビに飛ばして再生することを目的としており、テレビの音声を出力できない仕様になっている機種が多い。今ならスマホやPCから無線LAN経由で映像と音声を同時にテレビに送信するタイプが主流だし、HDMIケーブルなら音声も伝送できるので意図がわかりにくいが、アナログRGBケーブルは音声の伝送ができないので、それを補完するためのものだろうか。
今でもローエンドのテレビにはBluetoothがついていないので、Bluetoothのワイヤレスイヤホンを使おうとしたら、イヤホン端子に市販のBluetoothトランスミッターを接続することになるが、Bluetoothトランスミッターには充電用のUSB端子があるので、少なくとも電池交換は不要である。Bluetoothトランスミッターは一番安いので2000円くらい、高くても4000円くらいである。イヤホンを室内で使うなら遮音性は不要なので耳の中に圧迫感のあるカナル式よりもApple AirPodsのようなオープン式の方が使いやすいかもしれない。
USB端子から音声を出力できるなら、そこにBluetoothトランスミッターを接続することで、USBから給電できるのだが、テレビのUSB端子は録画用のHDDを接続することしか想定されていないようである。それでもUSB端子から電源だけを取ることはできるようである。
ハイエンドのテレビになってやっとBluetoothでの音声出力が可能になるが、PCやスマホには必ずついている機能をどうしてテレビにつけないのだろうか。音を出す製品だったら余計な機能をつける前に真っ先に対応して然るべきものだが、どうしてなかなか実現しないのだろうか。
Bluetoothによる音声の伝送遅延の対策は簡単で、音声の伝送が遅延する分だけ映像も遅延させればよい。Bluetoothイヤホンでテスト用の画像と音声を聞きながら手動でチューニングできるようにすればよいだろう。どのみち地上波デジタル放送の時代になってから映像の遅延はごく当たり前のことになった。いまさら0コンマ数秒遅れたとて影響は無い。