女性には寒がりな人が多くて、年がら年中部屋を暑くしたがる傾向がある。男性よりも皮下脂肪が多いのに寒がりなのはきっと筋肉が少なくて発熱量が乏しいのだろう。筋肉が多ければ常時発熱するから気温が低くても快適に過ごせる。寒いのが嫌なら筋トレして暑苦しいマッチョになれば解決するのにどうして実行しないのか理解に苦しむ。自分で決めて行動に移さなければ何も得られない。これから地球が寒冷化するにつれ、筋肉が足りなかったら体温を維持できずに死んでしまう。生き残りたかったら今すぐにでも筋トレすべきである。やり方がわからなかったらジムでインストラクターに「暑苦しいマッチョになりたい」と相談してメニューを組んでもらうとよいだろう。
筋トレは面倒だという人向けには、ジャンクフードを食べて暑苦しいデブになるという選択肢もある。デブになるとゴマフアザラシのように皮下脂肪が増えるので厚着するのと同じ効果がある。筋肉をつけるのが簡単でないのと同様に、脂肪をつけるのだって簡単ではない。多量のカロリーを摂取するためには消化器の容量が必要だし、摂取した栄養分から脂肪細胞を作るのも消化器である。体脂肪を増やすためには日々消化器を鍛える必要がある。デブは無意識のうちにやっているから気が付きにくいが、マッチョが筋肉を鍛えている間にデブは消化器を鍛えているのである。消化器もまた筋肉と同様に発熱するので、皮下脂肪によって断熱されると暖かくなる。
では、デブとマッチョは何が違うのだろうか。デブは皮下脂肪多めで筋肉量は普通である。一方、マッチョは筋肉が多く、一部の例外を除き皮下脂肪はさほど多くない。筋肉が多いと基礎代謝が大きくなるので、摂取したエネルギーの多くが筋肉で使われてしまい、脂肪として蓄えられる分が少ないためである。筋肉という熱源を持つのがマッチョ、皮下脂肪という断熱材を持つのがデブである。これが夏に違いをもたらす。
放熱の観点からデブとマッチョを比較すると、マッチョは筋肉が発熱するが、皮下脂肪が少ないため放熱される。デブは皮下脂肪が多いため、夏の放熱がうまくいかず、深部体温が上昇しやすい。そのため、デブは夏には冷却が必要である。発熱量と放熱量のバランスは重要で、一般に大型の動物ほど体積に対する表面積の比率が小さいので、放熱されにくい。したがって、寒冷地で体温を保つのには有利だが、夏に体温が上昇しやすいので暑い土地では不利である。そのためホッキョクグマのような大型の動物は主に寒冷地に生息する。ではゾウやカバやサイのような南方に生息する大型の動物はどうなのかというと、ゾウは大きな耳を仰いで放熱するし、カバは水中に生息して体重の負担を軽減すると同時に水冷する。サイは水辺に生息し泥浴びを好む。これはらすべて冷却のための仕組みである。反対に小型の動物は体積に比して表面積が大きいため放熱されやすく、寒冷地の生息に適さないので南方に生息する。