前原国土交通大臣は羽田空港を国際ハブ空港化すると発言して物議を醸している。その是非はともかくとして、そもそも羽田を国際ハブ空港化することは可能なのだろうか。
いくら羽田の滑走路が増えるとはいえ、成田発着のすべての国際線を羽田に移転できるほどの発着枠があるわけではない。たしかに、国内線の発着のピークと国際線の発着のピークとはずれているので、国内線と国際線との両方を運航することによって滑走路の利用効率は上がるだろう。また、貨物専用機の発着を深夜に移せば、深夜以外の時間帯の便数増を減らすことができる。しかしそれだけでは十分ではない。国内線と国際線の便数をほぼ半減する必要がある。
国際線の便数を十分に確保するためには、国内線の便数を減らさざるを得ない。新幹線開業に伴って、青森、富山、小松への便は大幅に減らすことができるだろう。不採算路線を廃止することによっても発着枠を確保できる。しかしこれらの空港への便数はもともと多くないので、さらに発着枠を確保するとしたら、地方空港へのノンストップ便を廃止して、千歳や福岡や関空で乗り継ぐハブオペレーションの導入し、国内のハブ空港への路線をA380で運航することが不可欠になる。北海道各方面へは千歳経由、四国や山陰方面へは関空経由、九州方面は福岡経由、沖縄八重山方面は那覇経由とするのである。乗り継ぎによって所要時間が増大するが、運航頻度が増えるため、待ち時間の減少で相殺される。仮に羽田が国際ハブ空港になるとしたら、そのおこぼれで関西空港が国内ハブ空港になるかもしれないので、大阪府にとってはあながち悪い話ではない。
同様に、国際線についても、少なくとも長距離路線についてはハブオペレーションによって発着枠を捻出する必要があるだろう。国際線のうち、収益力の低い路線は成田に残せばよい。発着料に差をつければ自ずとそうなるだろう。また、ハブ空港での乗り継ぎを好まないなら、不便なのを承知の上で成田からノンストップ便に乗ることもできるだろう。JALがデルタに吸収されれば成田の発着枠を大幅に削減できるだろうから、国際線を羽田に移すこともできなくはないのかもしれないが、あいにく国土交通省はデルタによるJAL吸収には消極的である。国内線でも同様に一部を成田に移転させることができれば楽だが、関空発着の国内線よりも悲惨な状況になるだろうから、こちらは実現可能性がない。
国内線にせよ国際線にせよ、発着便の大半をA380で運航できれば、1便当たりの座席数が倍増するので、便数を半減しても輸送力は確保できる。ハブオペレーションで座席の利用効率を向上させて空席を減らせば、さらに輸送力を確保できる。便数がほぼ一定なら、第1ターミナルを国際線ターミナルに改装すればターミナル容量も確保できる。国内線と国際線とで機材をA380に統一できれば、機材の運用も楽になるだろう。現状では、国内線で機材繰りのために閑散時にも運航しているが、国際線と共用できれば片輸送を解消できるだろう。例えば国内航空は朝の羽田行きと夕方以降の羽田発がメインなので、午前に羽田を出発する国際線や夕方に羽田に戻ってくる国際線とを組み合わせれば、日中の国内線の便数を減らすことができる。この運用だと、必然的に羽田で国内線と国際線との乗り継ぎが可能になる。
しかし、737、767、777中心の機材をA380とプロペラ機中心に入れ替えるのは現実的ではない。仮に737と777は中古市場で売れるとしても、大量のA380を数年以内に確保するのは物理的に不可能である。羽田から千歳まで30分おきに運航するためには、12機必要である。羽田から福岡まで30分おきに運航するためには、同様に12機必要である。また、関空発着便を1時間おきに運航するためには、4機必要である。ニューヨーク、ロンドン、パリの各方面で4機ずつ必要である。これだけで40機である。他の国際線も含めて60機ほどのA380が必要になる。運用でカバーするとしても50機は必要だろう。そんな数のA380は地球上に存在しない。そもそも、現在のJALにA380を25機(5000億円!)も発注できるだけの財務的体力などあるはずがない。仮に国が補助するとしたら、それこそバラマキ公共事業である。
国内線、国際線ともにA380によるハブオペレーションができれば羽田を国際ハブ空港にできないこともないのだろうが、肝心のA380の頭数が揃わなければ無理な話である。777-300やA340-600でも座席数が多いので、緻密に算盤を弾いた結果として777-300とA340-600でまかなえるのだとしたら、勝算はある。ただし、777-200を777-300に置き換えても、座席数は2割しか増えない。767やA300やA330-200との対比でも1.5倍に過ぎない。緻密に算盤を弾くとしたら、羽田発着の国内線と国際線のタイムテーブルを1から作る必要があるが、そんなリソースが国土交通省にあるのだろうか。
とはいえ、これほど利害関係者への影響の大きい事項を国土交通大臣が発言したからには、国土交通省内で何らかのシナリオがあると考えるのが自然だろう。実現可能性のないことのために利害関係者の反発を買うような発言をするのは無意味だからである。デルタがJALを吸収しようとしているのは、羽田の発着枠を買うためとみなせば納得が行く。日系航空会社とのパートナーシップがないままだと、成田に取り残されかねないため、万一羽田が国際ハブ空港化したら、競争上著しく不利な立場に立たされるからである。その割には国土交通省はデルタによるJAL吸収に消極的だが、本心はまだわからない。また、既得権益に手をつけざるを得ない内容だけに、民主党が政権を取っているうちに実行しなければチャンスがないともいえる。国内航空網を抜本的に組み替えるつもりでいるなら、できるときにやるしかない。もし本気なら、時期に具体的なプランが出てくるだろうから、しばらく待てば何か出てくるのではないだろうか。
もしかしたら、単に羽田での国際線運航を拡大するために吹っかけているだけなのかもしれないが、羽田での国際線の便数増は規定路線なので、政治的なリスクを取ってまで行動を起こす理由が理解できない。
いくら羽田の滑走路が増えるとはいえ、成田発着のすべての国際線を羽田に移転できるほどの発着枠があるわけではない。たしかに、国内線の発着のピークと国際線の発着のピークとはずれているので、国内線と国際線との両方を運航することによって滑走路の利用効率は上がるだろう。また、貨物専用機の発着を深夜に移せば、深夜以外の時間帯の便数増を減らすことができる。しかしそれだけでは十分ではない。国内線と国際線の便数をほぼ半減する必要がある。
国際線の便数を十分に確保するためには、国内線の便数を減らさざるを得ない。新幹線開業に伴って、青森、富山、小松への便は大幅に減らすことができるだろう。不採算路線を廃止することによっても発着枠を確保できる。しかしこれらの空港への便数はもともと多くないので、さらに発着枠を確保するとしたら、地方空港へのノンストップ便を廃止して、千歳や福岡や関空で乗り継ぐハブオペレーションの導入し、国内のハブ空港への路線をA380で運航することが不可欠になる。北海道各方面へは千歳経由、四国や山陰方面へは関空経由、九州方面は福岡経由、沖縄八重山方面は那覇経由とするのである。乗り継ぎによって所要時間が増大するが、運航頻度が増えるため、待ち時間の減少で相殺される。仮に羽田が国際ハブ空港になるとしたら、そのおこぼれで関西空港が国内ハブ空港になるかもしれないので、大阪府にとってはあながち悪い話ではない。
同様に、国際線についても、少なくとも長距離路線についてはハブオペレーションによって発着枠を捻出する必要があるだろう。国際線のうち、収益力の低い路線は成田に残せばよい。発着料に差をつければ自ずとそうなるだろう。また、ハブ空港での乗り継ぎを好まないなら、不便なのを承知の上で成田からノンストップ便に乗ることもできるだろう。JALがデルタに吸収されれば成田の発着枠を大幅に削減できるだろうから、国際線を羽田に移すこともできなくはないのかもしれないが、あいにく国土交通省はデルタによるJAL吸収には消極的である。国内線でも同様に一部を成田に移転させることができれば楽だが、関空発着の国内線よりも悲惨な状況になるだろうから、こちらは実現可能性がない。
国内線にせよ国際線にせよ、発着便の大半をA380で運航できれば、1便当たりの座席数が倍増するので、便数を半減しても輸送力は確保できる。ハブオペレーションで座席の利用効率を向上させて空席を減らせば、さらに輸送力を確保できる。便数がほぼ一定なら、第1ターミナルを国際線ターミナルに改装すればターミナル容量も確保できる。国内線と国際線とで機材をA380に統一できれば、機材の運用も楽になるだろう。現状では、国内線で機材繰りのために閑散時にも運航しているが、国際線と共用できれば片輸送を解消できるだろう。例えば国内航空は朝の羽田行きと夕方以降の羽田発がメインなので、午前に羽田を出発する国際線や夕方に羽田に戻ってくる国際線とを組み合わせれば、日中の国内線の便数を減らすことができる。この運用だと、必然的に羽田で国内線と国際線との乗り継ぎが可能になる。
しかし、737、767、777中心の機材をA380とプロペラ機中心に入れ替えるのは現実的ではない。仮に737と777は中古市場で売れるとしても、大量のA380を数年以内に確保するのは物理的に不可能である。羽田から千歳まで30分おきに運航するためには、12機必要である。羽田から福岡まで30分おきに運航するためには、同様に12機必要である。また、関空発着便を1時間おきに運航するためには、4機必要である。ニューヨーク、ロンドン、パリの各方面で4機ずつ必要である。これだけで40機である。他の国際線も含めて60機ほどのA380が必要になる。運用でカバーするとしても50機は必要だろう。そんな数のA380は地球上に存在しない。そもそも、現在のJALにA380を25機(5000億円!)も発注できるだけの財務的体力などあるはずがない。仮に国が補助するとしたら、それこそバラマキ公共事業である。
国内線、国際線ともにA380によるハブオペレーションができれば羽田を国際ハブ空港にできないこともないのだろうが、肝心のA380の頭数が揃わなければ無理な話である。777-300やA340-600でも座席数が多いので、緻密に算盤を弾いた結果として777-300とA340-600でまかなえるのだとしたら、勝算はある。ただし、777-200を777-300に置き換えても、座席数は2割しか増えない。767やA300やA330-200との対比でも1.5倍に過ぎない。緻密に算盤を弾くとしたら、羽田発着の国内線と国際線のタイムテーブルを1から作る必要があるが、そんなリソースが国土交通省にあるのだろうか。
とはいえ、これほど利害関係者への影響の大きい事項を国土交通大臣が発言したからには、国土交通省内で何らかのシナリオがあると考えるのが自然だろう。実現可能性のないことのために利害関係者の反発を買うような発言をするのは無意味だからである。デルタがJALを吸収しようとしているのは、羽田の発着枠を買うためとみなせば納得が行く。日系航空会社とのパートナーシップがないままだと、成田に取り残されかねないため、万一羽田が国際ハブ空港化したら、競争上著しく不利な立場に立たされるからである。その割には国土交通省はデルタによるJAL吸収に消極的だが、本心はまだわからない。また、既得権益に手をつけざるを得ない内容だけに、民主党が政権を取っているうちに実行しなければチャンスがないともいえる。国内航空網を抜本的に組み替えるつもりでいるなら、できるときにやるしかない。もし本気なら、時期に具体的なプランが出てくるだろうから、しばらく待てば何か出てくるのではないだろうか。
もしかしたら、単に羽田での国際線運航を拡大するために吹っかけているだけなのかもしれないが、羽田での国際線の便数増は規定路線なので、政治的なリスクを取ってまで行動を起こす理由が理解できない。