2011年11月25日にSONY Readerの新製品が発売されたようなので、せっかくなので店頭で触ってみた。もともとAmazonのKindleのようなe-inkを用いた電子書籍閲覧端末には興味があって、最近SONYがReaderの新製品を宣伝しているので、どのような使い勝手なのか気になった次第である。
第一印象は紙の本よりも軽いことである。たったの168gとスマートフォン並の重さだが、スマートフォンよりもサイズが大きいため、とても軽く感じられる。iPadは約600gなので片手で持つにはつらいが、Readerの重量はiPadの重量の3分の1以下であり、片手で持っても全く苦にならない。e-ink端末は消費電力が低いためバッテリー重量が小さいのだろう。第二は片手で操作できることである。本体の下の方にボタンが並んでいるので、そのボタンを親指で押せばひと通りの操作ができる。
この2つで何ができるかというと、混雑する電車の中で片手で本を読むことができる。紙の本を読むためには両手が空いている必要があるため、座席前に立って荷物を網棚に上げる必要があるが、そのような楽に立てる場所を確保するのも容易ではない。一番混雑する扉付近に立つとなるともはや本を読むのは無理で、携帯電話やスマートフォンをいじるくらいしかできない。Readerは携帯電話と同様に片手で持って片手で操作できるので、そのような場所に立っていても本を読める。本を読むための場所の確保に苦心しなくてよくなる。
文字の拡大縮小も容易である。iOSと異なり、文字を拡大しても1画面で収まるように改行してくれるので、いちいち指でドラッグしなくても全画面を読むことができ、したがって片手で操作できる。
紙の本と同様にペンで書き込むことができ、そのノートを整理して検索することができる。資格試験等の勉強の本には必須の機能である。嬉しいことに、書き込みが必要なくなったら消してきれいにすることができる。
内蔵メモリのうち1.4GBがデータ領域で、書籍1冊1MBとすると、内蔵メモリだけで1400冊格納できる。microSDカードを挿せるので、32GBのmicroSDを挿すと3万2千冊と無尽蔵に格納できる。WiFi経由や3G経由で購入する場合も、1冊1MBならすぐにダウンロードできるので、外からでも気軽に購入できる。漫画の単行本は1冊40MBらしく、内蔵メモリで35冊、32GBのmicroSDを挿すと800冊と、こちらも十分な量を格納できる。特に漫画はかさばるので電子データで持った方が便利だろう。
ビジネスの書類や学術論文とかもPDFにすれば読めるが、なにぶんディスプレイのサイズが小さいのでこのサイズの端末で考慮する必要はないだろう。PDFファイルで地図や時刻表が配布されていれば、それを格納して外で参照できる。軽いし液晶ディスプレイと違って屋外でも鮮明に見えるので、旅行に持ち出すには便利だろう。
というわけでハードウェアは申し分ない。やはり気になるのはコンテンツである。電子書籍についてはSONYオリジナルのReader Storeだけでなく楽天や紀伊国屋の電子書籍販売サイトも利用できるようで、近いうちに5万冊の供給を目指しているようである。Amazonに比べれば圧倒的に少ないとはいえ、e-inkに適した媒体といえば文庫と新書と漫画と、あとはいくばくかの文字主体の単行本くらいなので、そのエリアがカバーされていれば当面は十分だろう。なお、Reader Storeでは青空文庫と同様に著作権切れの文学作品を無料で提供している。
残念ながら日本では電子書籍であっても紙の書籍と同じくらいの値段である。紙よりも便利だし、高くても売れるなら安くする理由はないのだが、端末の値段が2万円することを考慮すると、普及の足かせになりそうである。流通経路に手をつけられなければ安くしようがないのはやむを得ないのだろう。
また、PC上の管理ソフトは店頭で見ることができなかったのだが、これの出来は大いに気になる。ウォークマンがいまいちなのはひとえに管理ソフトウェアの出来の悪さのせいである。
ネット端末としての機能は期待しない方がよい。それはスマートフォンやタブレット端末の領域である。電子書籍端末はテキストデータを読むことに特化して棲み分けるのがよい。やっとWiFiモデルと3G+WiFiモデルが出たが、たぶんWiFiモデルで十分だと思う。なぜならこの手のデジタルガジェットを所有する人は他にもいろいろなWiFi機器を所有しているだろうから、個別に3G回線契約を結ぶよりもモバイルWiFiルータ1台で済ませる方が便利だからである。それに3Gで通信しようものなら一気にバッテリーを消耗するので、バッテリーが長持ちするという利点が損なわれてしまう。