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いまどき退職金に意味があるのか

昔は退職金というとまとまったお金がもらえるイメージだったが、いまどき退職金に意味があるのだろうか。

退職金は労働基準法での義務ではないが、だいたい年収の2%くらいを毎年積み立てて運用して退職時に渡すのが慣例である。資産運用は複利で増えるし、経済が右肩上がりに成長していた時代には昇給もあったから、これが40年分積み重なると相当な額になる。昭和末期の退職金は退職時の年収の数倍くらいだろうか。さらに大企業の場合は厚生年金に上乗せする年金基金もあり、老後の収入に多大な影響を及ぼしているが、これも実質的には給与の後払いである。

一方、金利ゼロで経済成長率ゼロで、当然昇給もなしとなると、単に給与の2%を40年分積み立てるだけである。0.02*40*(1.00^40)=0.8となり、40年勤めあげても年収の8割でしかない。勤続5年で退職すれば年収の1割でしかない。そんな程度の退職金をありがたがるくらいだったら、わざわざ後払いされるよりも、毎年もらいたい。

財務会計上は純粋に給与の後払いでしかなく、給与の一定割合を退職給付費用として計上し、同額を退職給付引当金という負債として計上する。既に費用は発生しているのだが、従業員に支払わずに企業の財布に入れたままにするのである。

ではなぜ従業員に支払うべき給与の一部を後払いにするかといえば、退職金を人質に取って従業員が悪さをしないようにするためである。不祥事を起こしたら退職金を召し上げるようにすれば定年退職まで悪さをしないだろうと期待してのことである。たしかに勤続40年で定年退職間近になると退職金を失うようなことはしたくないので、リスクを取らずに大過なく過ごしたいだろう。

しかし退職金は給与の後払いに過ぎないので、勤続年数が短ければ大した額ではない。数年おきに転職するなら退職金のために我慢する必要はさほどない。内部留保のように再投資の原資にするとしても、年間人件費の2%では量的なインパクトが無いし、そもそも成長しない時代には再投資してもリターンが得られないのだから従業員からお金を借りるまでもない。

しいて言えば退職金は所得税法上一定額の控除が認められていて優遇されているから節税になるくらいである。年金基金についても、社会保険控除が適用されるし、年金としてもらう時期には元の所得が低いから、これも所得税の節約になる。しかしそれでも年収1000万円くらいまでなら所得税率自体は大したことが無い。給与所得者にとって負担が大きいのは厚生年金と健康保険と住民税である。

といったことを考えると、どうして本来もらえるべき給与の一部を会社に預けて後からもらおうとするのかよくわからない。特に中小企業の場合は倒産のリスクもある。いくら従業員未払給与が最優先の債権だといっても、実際には債権保全は早い者勝ちだし、そもそも返済の原資が無ければ話にならない。倒産リスクに対処するために退職金の原資を安全な場所に預けるというやり方もあるが、それだと本来もらえるはずの給与が誰の手にも渡らずに塩漬けになっているだけなので、余計に存在意義がわからない。

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