乗り物での移動用にワイヤレスイヤホンが欲しいと思っていろいろ検討していたのだが、結局Audio-Technica ATH-CKR70TWを購入した。Boseやソニーのドンシャリ系やJBLのガツン系は音楽の好みと合わないし、音で評判の良いゼンハイザーは4万円近くして高いし本体が大きく耳からの飛び出しが大きい。オーテクはフラットな音だし他社の同クラスの製品で3万円くらいするのが2万円で売っていてお買い得である。
【装着感】軽くて小さくて有線イヤホンと変わらない。これだけでも大きくて重い他の製品よりもすぐれており購入する価値がある。ケーブルが無いのでマスク着用時であってもケーブルが絡まることがない。また、ケーブルが無いのでケーブル断線の心配もない。
イヤーチップは本体にもともと装着されているものを含めて4サイズあるので、耳の穴に合ったサイズのものを選べばよいだろう。今のところ遮音には満足していて、他社製イヤーチップに交換する必要を感じない。
【Bluetooth接続】一旦右側のイヤホンで接続してからオーテクの後述のスマホアプリを開いて設定すると左側のイヤホンも認識されペアとして設定される。Macで接続する場合は、スマホアプリが使えないが、右側で接続するとすぐに左側も認識される。Windows PCで接続するときには普通にBluetoothデバイスとして接続する必要がある。最初は右側しか接続されないが、しばらくすると左側も使えるようになる。
イヤホン側で対応している伝送方式はaptXとAACとSBCである。aptXの方がAACよりもデータ転送量が多く遅延も少ない。スマホやPCの側がaptXに対応していればaptXまで使える。Androidスマホの多くやMacはaptXまで使えるが、iPhoneやiPadはAACまでである。とはいえ、AACだと音質に不満というわけでもない。
【アプリ】iOS版とAndroid版のアプリがある。iPadでも使えるがiOSアプリなのでスマホサイズで縦向きでしか使えない。
アプリで設定可能なのはコーデック方式の切り替えやイコライザーや「ノイズキャンセリング/ヒアスルー/オフ」の切り替えである。既に音楽プレイヤーで再生中の音楽があれば、アプリ上の音楽プレイヤーで操作できる。その他いろいろな設定項目がある。こんない小さいイヤホンなのにこれだけいろいろできるのは大したものである。
【操作感】タッチセンサーとボタンとの併用で、右ボタン1回で再生/一時停止、右ボタン2回で次の曲、右ボタン3回で前の曲。左ボタン1回で音量増、左ボタン2回で音量減。右タッチセンサー2回でクイックヒアスルー機能、左タッチセンサー2回でノイズキャンセリング→ヒアスルー→OFFの順で入れ替わる。ボタンは小さいので慣れるまでは押しにくい。タッチセンサーはあまり早く2回タッチすると反応しないので、適度な間隔を空ける必要があり、これも慣れが必要である。
イヤホンを装着したまま人と話す上で有用なのはクイックヒアスルーである。音楽の音量を下がって外の話し声が入ってくる。有線イヤホンと違ってイヤホンを外す必要がないが、イヤホンを耳に装着すれば自動で再生が始まり、イヤホンを外せば自動で一時停止するので、イヤホンを外すことで対処することも可能である。しかし外すと落としやすいので注意が必要である。外したらすぐにケースに入れた方がよい。
不便だと思ったのは複数の音楽再生デバイスを切り替えるときで、一旦オーテクのアプリで接続解除した上で、別の端末で接続する必要がある。とはいえ、普通の人はどのみち屋外ではスマホ1台しか使わないだろうから、乗り物での移動用として使うなら別のデバイスに切り替える必要は感じないかもしれない。
【充電】他のワイヤレスイヤホンと同様に本体をケースに入れて充電し、ケースはUSB接続で充電する方式である。ケースは小さいので鞄に入れても邪魔にならないが、上着のポケットに入れるのはやや大きい。大きさは大したことがないのだが、薄いものでないとポケットに入れにくい。USBケーブルはケース側がType-C、反対側がType-Aである。通常のUSB充電ならこれで特に問題ないが、新しめのMac Book AirやThinkPad X1 nanoにはUSB Type-Cの口しかないので、Type-C-Type-CケーブルかあるいはUSB Type-Cのハブが必要である。外で充電が必要になったときに都合よく充電できるとは限らないので、小さめのモバイルバッテリーを持参した方がよいだろう。幸いイヤホンもケースも消費電力は小さいので、余っているモバイルバッテリーで十分である。
【音質】事前にレビューコメントを見た限りでは「原音に忠実だが音がこもったような感じ」とのことだったが、実際に聴いてみたところ、たしかにガツンと飛び出してくるような音ではないがきれいな音で、こもったような感じはしない。刺激的な音ではないので長時間聴いても疲れなさそうである。クラシック音楽や静かめなジャズに向いているのではないだろうか。ロックのようなガツンとした音が好きならJabraなりJBLなりを選べばよいだろう。
屋外の雑踏の中で聴くと、屋外とは思えないほどまともな音がする。所詮ワイヤレスだしダイナミック式だからイヤホン本体部分にはあまり期待していなかったのだが(有線のATH-CKR70は1万円クラス)、実際に聴いてみると、ノイズキャンセリングの助けもあり、屋外用としてならこれで十分である。今のところは敢えて倍の値段を出してゼンハイザーを買おうという気にはならない。
【ノイズキャンセリング】屋外で聴く分には音楽がよく聞こえるのでおそらく効いているのだろうが、あまり強烈に効くわけではないのでノイズキャンセリングがオンかオフかで区別がつきにくい。静かな室内で聴く分にはノイズキャンセリングオフの方が自然な音に聞こえるし、もしかしたら消費電力も少し減るかもしれない。
【用途】乗り物での移動用に購入したが、深夜に室内で音楽を聴いたり、あるいは室内での仕事のときに耳栓の代わりに使ったりすることができる。マイクがついているのでTV会議用にも使える。意外と室内でも出番がありそうである。室内で使う場合であってもケーブルが無いのでケーブルに動作が制約されることがなくて快適である。