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物質的な欲望と知性との逆相関

低学歴者向けのメディアを見ると、「楽して儲ける方法」だの「飲む打つ買う」といった、物質的な欲望にまみれていることが見て取れる。この手の層は、その欲望とは裏腹に、楽して儲けることはできていないし、飲む打つ買うによって幸せに暮らしているようにも見えない。もう少し学歴が上がるとそこまで露骨ではないものの、「金を稼ぐことが成功の証」とか「地位が高いことが成功の証」といった感じで、まだ物質的な欲望が残っている。この辺りが物質的には最も充実している層である。もっと学歴が上がると物質的な欲望が減っていって、物質的な尺度で見ると、むしろ富や名声が減っているように見える。

どうしてそのような逆相関があるのだろうと思っていたが、一つの仮説を思いついた。人間が本来持っている能力は、物質的な欲望にかき消されるということである。物質的な欲求が薄れるにつれ、人間が本来持っている能力が徐々に発揮されるようになり、その結果、勤勉になったり頭脳が明晰になったりすると考えれば、それが学歴に反映されてもおかしくないだろう。また、学歴を獲得するためには勉強が不可欠で、その過程でテストで採点され、自己を客観視する訓練を受けるし、知的好奇心がある方がそういう訓練を受けるのが容易なので、そのような過程で物質的な欲望がそぎ落とされるという側面もあるのだろう。

ではこの仮説の意味するところは何か。それは物質的な欲望は錯覚だということである。たしかに人間が物質界で生きていくためには、物質的なサポートが不可欠である。しかし物質的なサポートは手段であって目的ではないし、人間が本来持っている能力が存分に発揮されれば、結果的に物質的に困ることもなくなる。実際、業界第一位の企業はえてして目先の金儲けではなく、自社のビジョンを実現するために努力してきた企業である。このような企業はビジョナリーカンパニーと呼ばれている。

物質的な欲望が錯覚であり、人間が本来持っている能力がより発揮されている状態が幸せだとするならば、学歴が高い方が幸せなのかもしれないと思いきや、なかなかそういうわけにはいかなくて、中途半端に物知りになると取越し苦労が増えるという側面もある。とはいえ、中途半端な物知りは知識はあっても知性は足りないのだろう。おそらく、高等教育が本当の意味での知性を獲得していないのだろう。そのため、高学歴な領域では学歴を尺度として使用するのはあまり適切ではないものの、低学歴から中学歴くらいの領域では、やはり学歴という尺度が役に立つ。

このように書くと、「低学歴者を見下している」と誤解されかねないが、低学歴者はある意味、物質的な錯覚を取り去るという意味では難易度の高いチャレンジしているともいえ、それは身体に障碍を負っている人がより大きなチャレンジをしていることと、ある意味同じことといえる。それに物質界で知性があるといってもたかが知れているし、どのような環境にあっても悩みは人それぞれだから、端から見ればどんぐりの背比べのようなものだろう。

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