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近代建築はなぜ泥に埋まっているのか

近代建築の中には1階部分が不自然に埋まっているように見えるものも見受けられる。典型的なのは、1階部分が半地下になっていて、その半地下部分に不自然な形の窓が作られていたりするものである。

煉瓦造りや石造りの重量の大きい建築物を建築する場合には、その重量を支えられるだけの地盤強度を持つ支持層まで杭を打つか支持層まで掘削して直接基礎を構築するかのいずれかが必要である。杭基礎工法が確立するまでは支持層まで掘削して直接基礎で構築するから、支持層の上で表土に埋もれている部分は必然的に地下室になる。地下室は表土からの湿気で内装が傷みやすいので、地上に露出した箇所に換気用の窓を設けることが通例である。

地盤の硬いヨーロッパではさほど表土を掘削しなくても岩盤層に当たるので、直接基礎であっても重量のある建築物を容易に構築できる。しかし、近代化と称して地盤の柔らかい場所にヨーロッパ式の近代建築を建てる場合には支持層まで深く掘削する必要があるし、形だけ真似て支持層まで掘削せずに建築すれば表土が建築物を支えられずに結局支持層まで沈下することになる。建築物が沈下した場合には、もともと1階だった場所が結果的に地下室になってしまい、かつて2階だった部分を1階として改修することになるため、地下室の窓配置が不自然だったり、1階部分の扉配置が不自然になったりする。この手の改修は実用上の必要に迫られてのものなので、建築当初の外観との整合を取る余裕がない。

この手の建築物が顕著に見られるロシアのサンクトペテルブルクは、河川からの堆積物の多い河口の三角州に人工的に作られた町で、もともと都市に不適な泥地にヨーロッパ式の建築物が建てられた。

近代建築が泥に埋まっているのは、もともとその土地に合った工法でないのにヨーロッパの技術を安易に移植したためである。近代以前の建築物に不自然に泥に埋まったまま現存している建築物があるだろうか。また、地中深くの支持層まで杭基礎を打てるようになって以降の建築物も不自然に泥に埋まったりしていない。建築というのは元来その土地にあった工法が継承されるものであり、泥に埋まるような建築物を建てる方がおかしい。近代というのはそのようなおかしな建築がまかり通ったおかしな時代であったともいえる。

土というのは我々の想像以上に軟らかいもので、例えば、高速道路で盛土と橋との境で大きな段差があったりするが、あれは、盛土が車の重量や盛土自体の自重によって沈下する一方で、橋脚は支持層まで基礎を打っているので沈下しにくいためである。高速道路で盛土を形成する際には、厚さ30cmくらいで転圧をかけて土が圧縮されてからさらに盛土して転圧をかけてということを繰り返して慎重に造成される。それでも地盤が軟弱である場合には沈下してしまうのである。橋梁工事の際には、重量のある橋脚を構築してから敢えて数年間放置して沈下が収まるまで待つこともある。ましてや、転圧もかけずに自動車よりもはるかに重量の大きい煉瓦造りや石造りの建築物が常時上に乗っていればさらに沈下しやすいことは想像に難くない。

強固な基礎の上に建てられた建築物の1階部分に泥が堆積したと見るよりも、泥は最初からそこにあって建築物が勝手に泥に埋もれたと見る方が容易に説明がつく。後から泥が堆積したとするならば、その泥は一体どこから来たのかを説明できなければならない。たしかに地形が急峻で洪水や土砂災害の多い日本では、大洪水の際に上流から流されてきた土砂が時には数メートルも堆積しているような場所もある。しかしそれは上流に土砂の供給源があり、かつその土砂を運搬する大量の降水があってのことである。地形がなだらかで降水量も少ないような地域では、洪水によって短期間に何メートルもの土砂を堆積させるような土砂の供給源はない。

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