2014年1月29日に発注した新しいThinkPad X1 Carbonが2月28日に到着した。当初の予定では3月1日出荷3月6日納品だったが、2月24日に出荷されて28日に到着となった。2月第1週は中国では春節休暇なので生産開始から出荷まで2週間、出荷から納品まで4日間だった。受注生産品で外国から輸送されてくる割にはそこそこの納期だと思う。
開封しての第一印象はやはり薄くて軽いということだった。実際の重量はThinkPad X200sの1.1kgよりも少し重い1.28kgなのだが、やはりフットプリントの大きさの割に軽いため、実際よりも軽く感じるのだろう。ディスプレイの縦方向はThinkPad X200sのよりも1cm程度大きいだけで、横方向は5cm程度大きい。X200sよりも額縁が小さいので、フットプリントはX200sよりも縦方向で1cm程度、横方向で3cm程度大きいだけである。厚さは1cmくらい薄くて、もはや全然別物である。
【Windows 8.1のセットアップ】
電源を入れるとWindows 8.1のセットアップが始まる。意外だったのは、Hotmailのアカウントを入力したらそのままユーザーIDになったことである。もちろんパスワードもHotmailのものである。クラウド上に一意なIDがあるならそちらを使う方が管理しやすいし、特にWindows系OSを搭載した複数のデバイスを使う場合のデータや設定の同期もしやすいので、いずれそうなるであろうことは予見できたものの、米国発祥なせいで、ファーストネームがユーザーIDになるのは日本では違和感を感じる。また、Windows 8を使うためにはHotmailのアカウントが不可欠になってしまうので、そういうのを嫌う人には改悪かもしれない。
Windows 8.1が立ち上がったものの、全然勝手がわからない。PCなのにタブレットみたいで、それでいてタッチパネルを使えるわけでもないので、なんだか使いにくい。スマホやタブレット向けにはよくできたUIなのかもしれないが、せっかく画面の大きいPCなのに単一アプリがまるまる1画面を占拠しているのも間抜けである。もしかしたら画面を分割して複数のアプリを表示することもできるのかもしれないが、Windows 8のことをもう少し勉強してみないとわからない。
「デスクトップ」を表示するボタンを見つけ出してデスクトップを表示すると、Windows 7までで慣れ親しんだ画面に到達できる。普段使うソフトウェア一式をインストールし、ローカルデータを移行すればあとは普通に使うことができる。最近はクラウドサービスが普及しているおかげで、移行すべきデータも少なくなってきた。
Windows 8のことは別途触れることにして、ここではThinkPad X1 Carbonのハードウェアに関連することを中心に記述することにしよう。とりあえず、ビジネスで使うならWindows 7ダウングレード権行使モデルにしておいた方が無難だろう。というか、法人ユーザーなら当然そうすると思う。
【ディスプレイ】
まずはディスプレイについてだが、1ドット当たりの大きさがRetinaディスプレイと同じくらいの大きさになったので、さすがに画像は鮮明である。iPhoneやiPod touchが初めてRetinaディスプレイを採用したときと同じ感動をすることができる。ちなみに1ドット当たりの大きさは12.1インチで1440*900だったThinkPad X200sの3分の2程度である。最初からこの解像度向けに設計されたソフトウェアの画像はとてもきれいである。一方、GoogleChromeではフォントがギザギザして却って見づらくなった。ハードウェアの解像度が高くてもフォントや画像データの解像度が低いため、そちらに制約されているようである。今の主流はせいぜい1600*900程度なので、普通に使うだけならその程度で十分かもしれない。しかしソフトウェアもいずれハードウェアに追いつくので、長く使うことを考えるならハードウェア性能に余裕を持たせておいた方がよいだろう。
調べてみたところ、実行ファイルのアイコンを右クリックして「プロパティ」を開き、「互換性」のタブを開いて、「高DPI設定では画面のスケーリングを無効にする」にチェックすればよいことがわかった。ただしこの方法だとウインドーバーが細くなってしまって見づらくなる。早速Google ChromeやiTunesを開いてみたところ、画面が激変して鮮明になった。特にほぼ常時使用しているGoogle Chromeのフォントが鮮明になると、やっと高解像度のディスプレイを使っている実感が得られる。
Google Chrome限定だが、chrome://flags/ で試験運用機能の設定画面を開き、「HiDPIサポート」を有効にすることでフォントを綺麗にすることもできる。この場合、ウインドウのバーが細くなって見にくくなることはなく、今まで通りに使える。
ディスプレイの横方向の拡大に伴い、今まで全画面表示で使っていたソフトウェアも全画面表示で使う必要がなくなった。左右に2つ窓を並べるくらいなら簡単にできる。窓の並べ方を含めた運用の仕方をこれから練る必要がある。
【キーボード】
《キータッチ》
ThinkPad X1 Carbonへの最大の関心はキーボードだろう。まずキータッチについては、先代のX1 Carbonよりもキーストロークが浅く感じられる。薄くするためにキーボードも薄くしたのだろう。同じアイソレーションキーボードでもE130みたいな汎用品で組まれたマシンの方がキーストロークが大きく感じられる。今まで使ったアイソレーションキーボードの中ではX121eのは打ちにくくて外付けのキーボードを使っていた。E130のキーボードには特にストレスを感じない。軽さを犠牲にしてでもキータッチを重視するなら設計に余裕のあるT440sの方がよいかもしれない。
クラシックキーボードを打つときは打鍵の際に下方向にキーを動かすことを意識するが、このようなキーストロークの浅いアイソレーションキーボードで打つときは、指の位置を少し高めにして打鍵するなりすぐに次のキーへと指を移動させることを意識すると、指の動きが縦方向でなく横方向へと意識されるので、キーストロークの浅さがあまり気にならず、むしろ打鍵にあまり力を入れなくなるので疲れにくくなるのではないだろうか。
《キーピッチ》
キーピッチについては、今まで使ってきたX200sよりも横方向に余裕があるので慣れないうちは横方向のキーが遠くに感じられるが、これは慣れの問題だろう。今後は十分な大きさのキーボードを確保できないPCはタブレットに取って代わられるだろうから、フルサイズのキーボードに慣れておいた方がよいだろう。
《キー配置》
キーの配置の変化も慣れを必要とする。6列のアイソレーションキーボードが導入された頃からキーの配置が変化しているので、そういうマシンを使っていれば変更箇所は比較的少ないが、7列のクラシックキーボードからいきなりこのキーボードに移行するといろいろ苦労するかもしれない。
‹半角/全角›
まず改善点から述べると、Aキーの左隣りに半角/全角キーがあるのは、日本語入力をする上でとても便利である。慣れないうちは左上のEscキーのある所を押してしまいそうになるが、もともとAキーの左隣は左手小指のホームポジションであり、キーボードの中では一等地である。そこに日本語入力で使用頻度の高い半角/全角キーを配置するのは合理的である。ただ、Aキーのすぐ隣にあるためにAを押すつもりで間違って半角/全角キーを押してしまいやすいので、注意が必要である。
なお、従来からの日本語キーボードでも、CapsLockキーを押すことで半角/全角と同じことができていたようだ。Windowsの日本語キーボードのCapsLockキーはShiftキーと同時に押して初めてCapsLockとして機能する。だとすると、Shiftキーの2度押しでCapsLockの機能を実現してしまえば、Aキーの左側のキーは半角/全角の機能しか残らないことになる。半角/全角キーの配置の変化は一見すると奇妙に見えるが、従来からのCapsLockキーの使い方からすればそんなにおかしくもない。
‹Ctrl›
Fnキーが左下から無くなったため、Ctrlキーが一番左下に配置されるようになった。左CtrlキーはWindowsではとても使用頻度の高いキーなのだが、Ctrl+CやCtrl+Vでコピー&ペーストするときにCtrlキーが遠くなってしまったので、操作に戸惑う。Ctrlキーはまた、Chromeで新しいタブでリンクを開くときにも多用するキーである。そのようなときには今まで右Ctrlキーを使ってきたが、右Ctrlキーが無くなってしまったので、左Ctrlキーを使わざるを得なくなった。左手小指で左Ctrlキーを押しながら左手親指で左ボタンを押すと比較的操作しやすい。マウスと異なり左右どちらの手でも操作できるのがトラックポイントの強みである。
‹Home, End, PgUp, PgDn›
HomeとEndがカーソルキーやPgUpキー/PgDnキーの近くに配置されるようになったのは便利である。カーソルを移動させる際には右手をカーソルキーに置いて操作することになるが、Home/Endキーが丁度右手親指の場所に位置しているので、慣れれば便利だと思う。
《アダプティブキーボード》
当モデルから、Fnキーがタッチパネル化された。場面に応じて最適なキー配列が実現するというのが売りで、実態としては物理キーを減らすことによるコストダウンだろう。たしかにFnキーはタッチタイピングで入力するキーというよりもむしろ単なるスイッチの代用なので、タッチパネル化してもさほど支障はない。
しかし、人差し指で数字キーを入力しているときなど、中指や薬指がアダプティブキーボードにふれてしまい誤作動することがよくある。特に左手薬指が画面の明るさの調整や音量調整のスイッチに触れてしまうことが多い。これを防ぐためには、ダイナミックモードを無効にして常に通常のFnキーが表示されるようにすればよい。画面の明るさや音量を調整したいときだけモードを変更すればよい。
【タッチパッド】
5ボタン式のタッチパッドが導入されたことでタッチパッドの面積がやっとMac並になった。画面の拡大縮小やスクロールには威力を発揮するものと期待していたのだが、あいにくMacのスムースさとは程遠いので、Mac並の操作性を期待すると失望することになる。これはハードウェアというよりもむしろOSの問題であり、ThinkPad用に作りこむとしてもMacに追いつくまでには時間がかかりそうである。また、中ボタン+トラックポイントのときとタッチパッドでスクロールするときとでは操作の向きが逆になるので、これも慣れが必要だろう。
しかしそれでも、マウスカーソルを動かすとか、左右のボタンを押すといった、従来からのWindowsのタッチパッドとして使う分にはとてもよくできている。タッチパッドの大きさがMac並になったことで、やっとストレスなしにマウスカーソルを動かすことができるようになった。
それでも、トラックポイントメインで使う限りタッチパッドは誤作動を誘発して邪魔である。そこで、タッチパッドを使わずにトラックポイントのみを使う設定にした。トラックポイントのみを使う設定でも、二本指での画面のスクロールや三本指での画面の切り替えは可能であり、マウスカーソルの移動のみが無効化されるので、トラックポイントとタッチパッドの使い分けは依然として可能である。
【トラックポイント】
‹ボタン›
5ボタン式タッチパッドの導入に伴い、トラックポイントのボタンがタッチパッドの一部になってしまった。右手で操作する際、左ボタンを押しているつもりで中ボタンを押してしまうことがあり、右手で操作すると左ボタンが遠い。それぞれ別のボタンならそんな打ち間違いは無いのだが、1枚のタッチパッドを区切っているだけなので、境界がわかりにくい。左ボタンを押すときには極力左手親指を使うとホームポジションからほとんど手を動かさずに操作できる。
右手親指で左ボタンを押そうとするとボタンが重くて疲れるのだが、タッチパッド全体がトラックポイントボタンになっているため、中ボタンと右ボタン以外はすべて左ボタンに設定されている。したがって、赤い線の引いてある所を押すまでもなく、中ボタンと右ボタンの場所以外で押しやすい場所を押せばよい。右手親指で左ボタンを押すときには、中ボタンの下側辺りを押すと比較的楽に押すことができる。
それでも、独立したトラックポイントボタンがあった頃に比べるとかなり使い勝手が悪化している。タッチパッド無しでトラックポイントのみのモデルがあれば便利だと思うが、タッチパッドとの統合はおそらく本体の薄型化のために必須で、もう後戻りできないのかもしれない。
‹キャップ›
トラックポイントのキャップは薄型キーボード専用の背の低い「ロープロファイルトラックポイントキャップ」である。従来型のトラックポイントキャップだと先に刺のついたクラシックドームと、上にゴムのギザギザのついているソフトドームと、中央部が凹んでいる ソフトリムとの3種類が利用可能だが、ロープロファイルトラックポイントキャップは、このうちソフトドームしかない。選択の余地が無いのでソフトドームのを使っているが、できればソフトリムのキャップも出してほしいものである。
【ファンクションキー】
ファンクションキーがタッチパネル化されてしまったのにも戸惑っているが、もともとファンクションキーは各種ボタンをキーボード上で実装するのが目的だったので、タッチパネル化していろいろな操作をできるようになったのは正常な進化だと思う。今までどおりのファンクションキーを打つモードも用意されているので、ファンクションキーをタッチタイプする人でなければさほど実害は無いのではないだろうか。
【サウンド】
音については、LenovoのモバイルノートPCは伝統的にモノラルスピーカーだったが、ThinkPad X1 Carbonにはステレオスピーカーがついている。とはいえ、極めて限られたスペースに押し込まれているものなので音質は期待できない。もともとThinkPadのスピーカーは机に音を反射させることを前提にした設計なので、机の上に載せればポータブルスピーカー並の音質にはなるが、膝の上に乗せているときにはそういう反射を利用できないので、相応の音質になる。もっとも膝の上に乗せているときというのは往々にして外出中だったりするので、そういうときにスピーカーを鳴らすことはないだろう。その代わりヘッドホン使用時の音質はなかなかのものである。実はDolby Digital Plusが動いていて、デフォルトでは映画向けの設定になっているので、その状態で音楽を聴くと不自然な音になる。音楽向けの設定に変更するとそれらしき聞こえ方になるが、人工的に作っている音なのでそういうものだという割り切りが必要だろう。
【スリープ】
サスペンド(スリープ)時は今まで通り蓋を閉じるだけである。蓋を開ければレジュームする。意外だったのは、レジュームしてすぐに無線LANがつながっていたことである。Windows 7を使っていた頃はVistaよりははるかにましになったとはいえそれでも無線LANのアクセスポイントを見つけて接続するまで結構時間がかかっていた。伝統的にWindowsはネットワーク周りのパフォーマンスが他のOSよりも劣っていたのだが、Windows 8になってやっと他のOS並になったのかもしれない。タブレット端末向けの技術のおかげだろうか。
【SSDはサムスン製】
そういえば装着されている256GBのSSDはどこ製だろうと思ってデバイスマネージャーを開いてみたところ、サムスン製だった。使用上は全く問題ない。
【NFC】
新しいThinkPad X1 Carbonには標準でNFCがついているが、Felica対応ではないので電子マネーにチャージしたりすることはできない。NFCの使い方としては、NFC対応のスマホとの間の通信や、NFCを搭載しているThinkPadトラックポイントBluetoothキーボードとのペアリング等が可能である。
【指紋センサー】
X200sの指紋センサーの出来がよくなかったので使うつもりはなかったのだが、指紋センサー無しのオプションが無かったので必然的に装備されている。X200sのときは自分の指なのに正常に読み取られずに全然使い物にならなかったのだが、さすがに5年も経過すれば改良されるのか、X1 Carbonの指紋センサーには特に不具合は無い。OSのパスワードを入力する代わりに指でなぞるだけなので、機能していればとても便利である。両手の指を登録することができるが、指紋センサーはキーボード右側についているので、事実上右手での使用が想定されている。
【パスワードマネージャー】
本体の暗号化チップにパスワードを覚えさせるすぐれもので、指紋センサーとあいまって普段使いではほとんどパスワードの入力が必要でなくなるが、最近はウェブブラウザやセキュリティソフトにもパスワード記録機能があるので機能が重複している。また、ThinkPadのパスワードマネージャーはユーザーIDとパスワードの入力のみならずログイン動作もするのだが、一部のウェブサイトでは自動ログインするとエラーになるので、実はあまり役に立っていない。おそらく必要なセキュリティレベルに応じて他と使い分けるべきもので、最も高いセキュリティレベルが求められるパスワードに対しては有効だと思う。
以上、ハードウェアの操作に関する第一印象だった。外に持ちだしたときの使い勝手については別途レビューすることにする。
開封しての第一印象はやはり薄くて軽いということだった。実際の重量はThinkPad X200sの1.1kgよりも少し重い1.28kgなのだが、やはりフットプリントの大きさの割に軽いため、実際よりも軽く感じるのだろう。ディスプレイの縦方向はThinkPad X200sのよりも1cm程度大きいだけで、横方向は5cm程度大きい。X200sよりも額縁が小さいので、フットプリントはX200sよりも縦方向で1cm程度、横方向で3cm程度大きいだけである。厚さは1cmくらい薄くて、もはや全然別物である。
【Windows 8.1のセットアップ】
電源を入れるとWindows 8.1のセットアップが始まる。意外だったのは、Hotmailのアカウントを入力したらそのままユーザーIDになったことである。もちろんパスワードもHotmailのものである。クラウド上に一意なIDがあるならそちらを使う方が管理しやすいし、特にWindows系OSを搭載した複数のデバイスを使う場合のデータや設定の同期もしやすいので、いずれそうなるであろうことは予見できたものの、米国発祥なせいで、ファーストネームがユーザーIDになるのは日本では違和感を感じる。また、Windows 8を使うためにはHotmailのアカウントが不可欠になってしまうので、そういうのを嫌う人には改悪かもしれない。
Windows 8.1が立ち上がったものの、全然勝手がわからない。PCなのにタブレットみたいで、それでいてタッチパネルを使えるわけでもないので、なんだか使いにくい。スマホやタブレット向けにはよくできたUIなのかもしれないが、せっかく画面の大きいPCなのに単一アプリがまるまる1画面を占拠しているのも間抜けである。もしかしたら画面を分割して複数のアプリを表示することもできるのかもしれないが、Windows 8のことをもう少し勉強してみないとわからない。
「デスクトップ」を表示するボタンを見つけ出してデスクトップを表示すると、Windows 7までで慣れ親しんだ画面に到達できる。普段使うソフトウェア一式をインストールし、ローカルデータを移行すればあとは普通に使うことができる。最近はクラウドサービスが普及しているおかげで、移行すべきデータも少なくなってきた。
Windows 8のことは別途触れることにして、ここではThinkPad X1 Carbonのハードウェアに関連することを中心に記述することにしよう。とりあえず、ビジネスで使うならWindows 7ダウングレード権行使モデルにしておいた方が無難だろう。というか、法人ユーザーなら当然そうすると思う。
【ディスプレイ】
まずはディスプレイについてだが、1ドット当たりの大きさがRetinaディスプレイと同じくらいの大きさになったので、さすがに画像は鮮明である。iPhoneやiPod touchが初めてRetinaディスプレイを採用したときと同じ感動をすることができる。ちなみに1ドット当たりの大きさは12.1インチで1440*900だったThinkPad X200sの3分の2程度である。最初からこの解像度向けに設計されたソフトウェアの画像はとてもきれいである。一方、GoogleChromeではフォントがギザギザして却って見づらくなった。ハードウェアの解像度が高くてもフォントや画像データの解像度が低いため、そちらに制約されているようである。今の主流はせいぜい1600*900程度なので、普通に使うだけならその程度で十分かもしれない。しかしソフトウェアもいずれハードウェアに追いつくので、長く使うことを考えるならハードウェア性能に余裕を持たせておいた方がよいだろう。
調べてみたところ、実行ファイルのアイコンを右クリックして「プロパティ」を開き、「互換性」のタブを開いて、「高DPI設定では画面のスケーリングを無効にする」にチェックすればよいことがわかった。ただしこの方法だとウインドーバーが細くなってしまって見づらくなる。早速Google ChromeやiTunesを開いてみたところ、画面が激変して鮮明になった。特にほぼ常時使用しているGoogle Chromeのフォントが鮮明になると、やっと高解像度のディスプレイを使っている実感が得られる。
Google Chrome限定だが、chrome://flags/ で試験運用機能の設定画面を開き、「HiDPIサポート」を有効にすることでフォントを綺麗にすることもできる。この場合、ウインドウのバーが細くなって見にくくなることはなく、今まで通りに使える。
ディスプレイの横方向の拡大に伴い、今まで全画面表示で使っていたソフトウェアも全画面表示で使う必要がなくなった。左右に2つ窓を並べるくらいなら簡単にできる。窓の並べ方を含めた運用の仕方をこれから練る必要がある。
【キーボード】
《キータッチ》
ThinkPad X1 Carbonへの最大の関心はキーボードだろう。まずキータッチについては、先代のX1 Carbonよりもキーストロークが浅く感じられる。薄くするためにキーボードも薄くしたのだろう。同じアイソレーションキーボードでもE130みたいな汎用品で組まれたマシンの方がキーストロークが大きく感じられる。今まで使ったアイソレーションキーボードの中ではX121eのは打ちにくくて外付けのキーボードを使っていた。E130のキーボードには特にストレスを感じない。軽さを犠牲にしてでもキータッチを重視するなら設計に余裕のあるT440sの方がよいかもしれない。
クラシックキーボードを打つときは打鍵の際に下方向にキーを動かすことを意識するが、このようなキーストロークの浅いアイソレーションキーボードで打つときは、指の位置を少し高めにして打鍵するなりすぐに次のキーへと指を移動させることを意識すると、指の動きが縦方向でなく横方向へと意識されるので、キーストロークの浅さがあまり気にならず、むしろ打鍵にあまり力を入れなくなるので疲れにくくなるのではないだろうか。
《キーピッチ》
キーピッチについては、今まで使ってきたX200sよりも横方向に余裕があるので慣れないうちは横方向のキーが遠くに感じられるが、これは慣れの問題だろう。今後は十分な大きさのキーボードを確保できないPCはタブレットに取って代わられるだろうから、フルサイズのキーボードに慣れておいた方がよいだろう。
《キー配置》
キーの配置の変化も慣れを必要とする。6列のアイソレーションキーボードが導入された頃からキーの配置が変化しているので、そういうマシンを使っていれば変更箇所は比較的少ないが、7列のクラシックキーボードからいきなりこのキーボードに移行するといろいろ苦労するかもしれない。
‹半角/全角›
まず改善点から述べると、Aキーの左隣りに半角/全角キーがあるのは、日本語入力をする上でとても便利である。慣れないうちは左上のEscキーのある所を押してしまいそうになるが、もともとAキーの左隣は左手小指のホームポジションであり、キーボードの中では一等地である。そこに日本語入力で使用頻度の高い半角/全角キーを配置するのは合理的である。ただ、Aキーのすぐ隣にあるためにAを押すつもりで間違って半角/全角キーを押してしまいやすいので、注意が必要である。
なお、従来からの日本語キーボードでも、CapsLockキーを押すことで半角/全角と同じことができていたようだ。Windowsの日本語キーボードのCapsLockキーはShiftキーと同時に押して初めてCapsLockとして機能する。だとすると、Shiftキーの2度押しでCapsLockの機能を実現してしまえば、Aキーの左側のキーは半角/全角の機能しか残らないことになる。半角/全角キーの配置の変化は一見すると奇妙に見えるが、従来からのCapsLockキーの使い方からすればそんなにおかしくもない。
‹Ctrl›
Fnキーが左下から無くなったため、Ctrlキーが一番左下に配置されるようになった。左CtrlキーはWindowsではとても使用頻度の高いキーなのだが、Ctrl+CやCtrl+Vでコピー&ペーストするときにCtrlキーが遠くなってしまったので、操作に戸惑う。Ctrlキーはまた、Chromeで新しいタブでリンクを開くときにも多用するキーである。そのようなときには今まで右Ctrlキーを使ってきたが、右Ctrlキーが無くなってしまったので、左Ctrlキーを使わざるを得なくなった。左手小指で左Ctrlキーを押しながら左手親指で左ボタンを押すと比較的操作しやすい。マウスと異なり左右どちらの手でも操作できるのがトラックポイントの強みである。
‹Home, End, PgUp, PgDn›
HomeとEndがカーソルキーやPgUpキー/PgDnキーの近くに配置されるようになったのは便利である。カーソルを移動させる際には右手をカーソルキーに置いて操作することになるが、Home/Endキーが丁度右手親指の場所に位置しているので、慣れれば便利だと思う。
《アダプティブキーボード》
当モデルから、Fnキーがタッチパネル化された。場面に応じて最適なキー配列が実現するというのが売りで、実態としては物理キーを減らすことによるコストダウンだろう。たしかにFnキーはタッチタイピングで入力するキーというよりもむしろ単なるスイッチの代用なので、タッチパネル化してもさほど支障はない。
しかし、人差し指で数字キーを入力しているときなど、中指や薬指がアダプティブキーボードにふれてしまい誤作動することがよくある。特に左手薬指が画面の明るさの調整や音量調整のスイッチに触れてしまうことが多い。これを防ぐためには、ダイナミックモードを無効にして常に通常のFnキーが表示されるようにすればよい。画面の明るさや音量を調整したいときだけモードを変更すればよい。
【タッチパッド】
5ボタン式のタッチパッドが導入されたことでタッチパッドの面積がやっとMac並になった。画面の拡大縮小やスクロールには威力を発揮するものと期待していたのだが、あいにくMacのスムースさとは程遠いので、Mac並の操作性を期待すると失望することになる。これはハードウェアというよりもむしろOSの問題であり、ThinkPad用に作りこむとしてもMacに追いつくまでには時間がかかりそうである。また、中ボタン+トラックポイントのときとタッチパッドでスクロールするときとでは操作の向きが逆になるので、これも慣れが必要だろう。
しかしそれでも、マウスカーソルを動かすとか、左右のボタンを押すといった、従来からのWindowsのタッチパッドとして使う分にはとてもよくできている。タッチパッドの大きさがMac並になったことで、やっとストレスなしにマウスカーソルを動かすことができるようになった。
それでも、トラックポイントメインで使う限りタッチパッドは誤作動を誘発して邪魔である。そこで、タッチパッドを使わずにトラックポイントのみを使う設定にした。トラックポイントのみを使う設定でも、二本指での画面のスクロールや三本指での画面の切り替えは可能であり、マウスカーソルの移動のみが無効化されるので、トラックポイントとタッチパッドの使い分けは依然として可能である。
【トラックポイント】
‹ボタン›
5ボタン式タッチパッドの導入に伴い、トラックポイントのボタンがタッチパッドの一部になってしまった。右手で操作する際、左ボタンを押しているつもりで中ボタンを押してしまうことがあり、右手で操作すると左ボタンが遠い。それぞれ別のボタンならそんな打ち間違いは無いのだが、1枚のタッチパッドを区切っているだけなので、境界がわかりにくい。左ボタンを押すときには極力左手親指を使うとホームポジションからほとんど手を動かさずに操作できる。
右手親指で左ボタンを押そうとするとボタンが重くて疲れるのだが、タッチパッド全体がトラックポイントボタンになっているため、中ボタンと右ボタン以外はすべて左ボタンに設定されている。したがって、赤い線の引いてある所を押すまでもなく、中ボタンと右ボタンの場所以外で押しやすい場所を押せばよい。右手親指で左ボタンを押すときには、中ボタンの下側辺りを押すと比較的楽に押すことができる。
それでも、独立したトラックポイントボタンがあった頃に比べるとかなり使い勝手が悪化している。タッチパッド無しでトラックポイントのみのモデルがあれば便利だと思うが、タッチパッドとの統合はおそらく本体の薄型化のために必須で、もう後戻りできないのかもしれない。
‹キャップ›
トラックポイントのキャップは薄型キーボード専用の背の低い「ロープロファイルトラックポイントキャップ」である。従来型のトラックポイントキャップだと先に刺のついたクラシックドームと、上にゴムのギザギザのついているソフトドームと、中央部が凹んでいる ソフトリムとの3種類が利用可能だが、ロープロファイルトラックポイントキャップは、このうちソフトドームしかない。選択の余地が無いのでソフトドームのを使っているが、できればソフトリムのキャップも出してほしいものである。
【ファンクションキー】
ファンクションキーがタッチパネル化されてしまったのにも戸惑っているが、もともとファンクションキーは各種ボタンをキーボード上で実装するのが目的だったので、タッチパネル化していろいろな操作をできるようになったのは正常な進化だと思う。今までどおりのファンクションキーを打つモードも用意されているので、ファンクションキーをタッチタイプする人でなければさほど実害は無いのではないだろうか。
【サウンド】
音については、LenovoのモバイルノートPCは伝統的にモノラルスピーカーだったが、ThinkPad X1 Carbonにはステレオスピーカーがついている。とはいえ、極めて限られたスペースに押し込まれているものなので音質は期待できない。もともとThinkPadのスピーカーは机に音を反射させることを前提にした設計なので、机の上に載せればポータブルスピーカー並の音質にはなるが、膝の上に乗せているときにはそういう反射を利用できないので、相応の音質になる。もっとも膝の上に乗せているときというのは往々にして外出中だったりするので、そういうときにスピーカーを鳴らすことはないだろう。その代わりヘッドホン使用時の音質はなかなかのものである。実はDolby Digital Plusが動いていて、デフォルトでは映画向けの設定になっているので、その状態で音楽を聴くと不自然な音になる。音楽向けの設定に変更するとそれらしき聞こえ方になるが、人工的に作っている音なのでそういうものだという割り切りが必要だろう。
【スリープ】
サスペンド(スリープ)時は今まで通り蓋を閉じるだけである。蓋を開ければレジュームする。意外だったのは、レジュームしてすぐに無線LANがつながっていたことである。Windows 7を使っていた頃はVistaよりははるかにましになったとはいえそれでも無線LANのアクセスポイントを見つけて接続するまで結構時間がかかっていた。伝統的にWindowsはネットワーク周りのパフォーマンスが他のOSよりも劣っていたのだが、Windows 8になってやっと他のOS並になったのかもしれない。タブレット端末向けの技術のおかげだろうか。
【SSDはサムスン製】
そういえば装着されている256GBのSSDはどこ製だろうと思ってデバイスマネージャーを開いてみたところ、サムスン製だった。使用上は全く問題ない。
【NFC】
新しいThinkPad X1 Carbonには標準でNFCがついているが、Felica対応ではないので電子マネーにチャージしたりすることはできない。NFCの使い方としては、NFC対応のスマホとの間の通信や、NFCを搭載しているThinkPadトラックポイントBluetoothキーボードとのペアリング等が可能である。
【指紋センサー】
X200sの指紋センサーの出来がよくなかったので使うつもりはなかったのだが、指紋センサー無しのオプションが無かったので必然的に装備されている。X200sのときは自分の指なのに正常に読み取られずに全然使い物にならなかったのだが、さすがに5年も経過すれば改良されるのか、X1 Carbonの指紋センサーには特に不具合は無い。OSのパスワードを入力する代わりに指でなぞるだけなので、機能していればとても便利である。両手の指を登録することができるが、指紋センサーはキーボード右側についているので、事実上右手での使用が想定されている。
【パスワードマネージャー】
本体の暗号化チップにパスワードを覚えさせるすぐれもので、指紋センサーとあいまって普段使いではほとんどパスワードの入力が必要でなくなるが、最近はウェブブラウザやセキュリティソフトにもパスワード記録機能があるので機能が重複している。また、ThinkPadのパスワードマネージャーはユーザーIDとパスワードの入力のみならずログイン動作もするのだが、一部のウェブサイトでは自動ログインするとエラーになるので、実はあまり役に立っていない。おそらく必要なセキュリティレベルに応じて他と使い分けるべきもので、最も高いセキュリティレベルが求められるパスワードに対しては有効だと思う。
以上、ハードウェアの操作に関する第一印象だった。外に持ちだしたときの使い勝手については別途レビューすることにする。